一人暮らしの食事術
自炊のことはあまり心配しなかった。独身時代の2年間、東京近郊の精米屋の屋根裏で、ネズミと一緒に暮らしながら自炊したことがあるからだ。その頃に比べれば、プロパンガスはあるし、スーパーには何でも賣っているし、畑からとれる野菜もある。
毎朝起きると、電気釜に残っている米飯を茶碗一杯分掬いとって、柄のついた平たい鍋に移し水をったぶりくわえて煮立てる。米は三日分くらいを一度に炊いておくので、電気釜の中には常に冷飯があるのだ。電子レンジがあれば、こんな手間は必要ないが、冷たい飯を暖かくして食べるには粥にするのが一番なのである。
昼食はパン一枚か、インスタントラーメン。夕飯には、味噌汁を作る。朝昼の食事が簡単だったから、夕食にはなるべく栄養のあるものを用意した。味噌汁には具をたくさん入れる。ときどき、すき焼きやら、豚肉をごろごろするほど入れたカレーライスを作った。
こんな具合だから、調理に使う用具は下図に示した三種類のもので事足りた。最も、使用頻度の高かったのは(2)の柄の付いた平鍋で、これは新たにもう一個買い足して、肉じゃがや、惣菜を作るのに使った。
1電気釜
2取っ手付き鍋(粥用)
3耳付き鍋(味噌汁用)
ここで毎日の食事の費用を計算してみよう(価格は10年前のもの)。
*米飯一杯分が約30円。これを一日に3杯食べるから計90円
*卵が一個20円
*食パン一枚20円
*味噌、納豆、豆腐、肉など約100円
以上を合計すると、食費として支出する金額は一日で大体、230円になる。つまり、千円札一枚で4日暮らせるわけだ。月額にすると、7000円あれば十分ということになる。
その他の費用となると、こういう訳にはいかない。後で計算してみたら冬季を除く普通の月は、光熱費に5000円を使っている。その内訳は次の通り。
*台所用プロパンガス 1500円
*風呂釜用石油 1000円
*電気料 2500円
プロパンガスの使用量は年間を通してほとんど変わらなかったが、石油の代金と電気料は冬季になると急増する。この急増分を加えて、平均月額を算出すると、7000円あまりになる。
新刊書は我慢して買わないようにしていたが、当時も今も、新聞は二紙とっている。月刊誌も二つ取り寄せていた。これに、テレビの受信料などを加え、教養娯楽費として月に9300円が出ていった。衣料は全く買わなかった。
これ以外の雑費を加えて合計すると、一ヶ月の総経費は3万円弱で足りている。
続く