初冬
信州の冬の寒さは厳しいが、初冬の頃はさほどでもない。特に、南信地方は、たまに淡雪が降るほかは連日晴天が続き、戸外でスポーツする人々にとっては一年中で一番いい季節かもしれない。
初冬の頃、段丘に上って驚くことがある。低地では雪の気配が全然ないのに、段丘にはうっすらと雪が積もっていることがあるからだ。この季節には、ほんの僅かの高低差で、地上に雪があったりなかったりするのだ。
下の写真は、段丘上に拡がる六道原から、中央アルプスを望んだものだ。枯れススキの残る原には雪があるが、丘を下れば地面は黒々として乾いているのである。
間近にある山が上の方からだんだん白くなって行く・・・これが初冬の頃の伊那谷の平均的な光景なのである。つまり、下の写真にあるような光景がそれである。
冬の到来を感じさせるものに、林間を流れる川がある。水量豊かだった川も、冬に入ると水が細ってくる。そして川面はガラス板を張り渡したような薄い氷で覆われる。日が照って暖かくなれば、乏しい水がこの氷の下をちろちろ流れるのだ。下の写真で、白く光っているのは水面ではなく、薄い氷である。
里山には粉白粉をまぶした程度の雪があるだけ。だが、その上にそびえるアルプスの主峰は、氷雪を身にまとって氷砂糖のように輝く。
心身を引き締め、だれた気持を一新するには、初冬の人気のない段丘上を1人で歩いてみることだ。冷たく澄んだ空気や、永遠の相をしめす自然に向き合えば、気持は自ずと改まる。そして、いつもは見逃していた地形の凹凸に気がついたりするのだ。
平坦な畑地にも変化が生じている。畑に降った雪が、風に吹き飛ばされて所々地面をあらわしている。白一色の地表より、この方がいい。親しみが感じられるのだ。