棚の上の集落

山の斜面に帯状の平地が開けているところがある。そこに人の住む家が建ち並ぶようになると、「棚の上の集落」といった観を呈するようになる。こうした集落は伊那の各地にあり、「上棚」というような地名の集落さえある。

ここに紹介するのは、南アルプスと伊那山脈にはさまれた裏街道=秋葉街道筋に見られる棚集落で、これを遠望すると下の二枚の写真のようになる。ある夏の日、興味を感じて、バイクをこの棚の上に乗り入れてみた。遠目で見ると貧弱に見えた集落だったが、道路は舗装されているし、その道路に沿って列を作って並んでいる住宅にも瀟洒な感じのものが多かった。

驚いたのは道ばたに花が植えられて、延々と続く花壇のようになっていることだった。

どの家にもホンダのカブがあることにも注意を引かれた。こうしたところに住み、毎日坂道を上り下りしている身にとっては、原付バイクが履き物のように利用されているのだろう。だから、バイクに乗るのにヘルメットをかぶるような面倒なことをしない人が多い。麦わら帽子をかぶったまま、バイクに乗るのである。交通事故の心配もないのだから、これで結構だろう。

上の地点を拡大した写真。

下図は別の地区の棚集落。この棚集落の下方に、一段下がって人家の列が見える。こういう具合に、上下二段になった列状集落が伊那谷の特色なのである。

一段高みにあるこうした棚集落に、部外者がやってくることは少ないに違いない。従って、自分の家の前の道は、自家用の庭のように思われて、競って花を植えるのだろう。これを眺めながらバイクを走らせているうちに、「花いっぱい運動」という言葉が浮かんできた。

その花の植え方も半端ではない。ヒマワリが群落をなして植えられていたりするのだ。

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