集落-点と線
山間部では、耕地の面積も居住の適地も限られている。そこで集落は一本の道路の両側、あるいは片側に集まった紐状の形態をとることになる。段丘の幅が狭く、その上を通る道路が一本しかないような場合、この道沿いに両側町がどこまでも続くことになる。下図はその一例で、航空写真で撮れば面白いだろうと思う。
下図に見るジグザグの道は開通して間もない道路らしい。段丘と更にその上にある台地を結ぶ坂になった道路である。道にジグザグの角度をつけたのは、道路が急傾斜になることを避けたためだが、こうした道にも、もう片側町が出来かけている。
水田と畑がうち続く段丘上に、ひとかたまりになって新築の家が建っている。海の中に突き出た長崎の出島のようだ。耕地の真ん中に家が団塊をなして集まる光景は、もう、珍しくはなくなった。耕地の所有者が整地をして、そこに水道を引いたから、その一角にだけ家が建ったのだ。
山裾に団塊をなして家が集まり、村落が発生するのも事情は同じようなものだろう。谷川の水があったり、場所が扇状地でわき水に恵まれていたりすれば、自ずから人が集まってくるのだ。下図の集落は、北側に山を背負い、南に開けた地形上に立地している。日当たりがいい上に、谷川の水と扇状地のわき水の双方にめぐまれているから家がこのように密集することになったのではないか。
「僻地」と呼ばれるあたりをバイクで走っていたら、水田の向こうに一群の家があり、ちょっと注意を引かれた。下図の写真では明らかではないけれど、ほとんどすべての家がトタン葺きだったからだ。市街部から山間部に入って行くにつれてトタン葺きの屋根が増えてくる。しかしトタン葺きの屋根ばかりという集落は、そう多くはない。