秋の気配

木々が緑の葉を落とし、足下の草が黄色く枯れてくると、大地はその裸相をあらわにしてくる。山野は遠くまで見通しがきくようになり、空の色が深くなる。

何ということもない風景に心を動かされるのも、この時期だ。以下に掲げるのは、いずれも「何ということもない風景」である。

段丘上の「六道原」

造成地の夕暮れ

刈り入れが済んだ後の耕地には、ほとんど人影が見えなくなる。そのためか、カラスや鳶が我が物顔に低空を飛び回っている。下の写真を撮っているとき、一羽のカラスが私の眼前を横切っていった。目の高さほどの低いところを横切っていったから、羽音が聞こえるほどだった。

稲刈りが済み、刈り取った稲がハザに架けて干される。あたりは乾いてカラカラになり、視野が一挙に広くなる。明るい。本当に明るい。台地が一年中で最も明るくなるのは、夏の盛りではなくてこの頃なのだ。

段丘の端まで行って、下方を眺める。

天竜川流域も稲刈りが済んで、広々とした平地に変わっている。点在する農家が覆いを剥がれて裸にされたように見える。

茅葺きの農家を守る包み込んでいる立木も紅葉を始めている。

秋から冬への歩みは、山波の方が麓より数歩早い。麓では落葉樹がまだ青い葉をつけているのに、駒ヶ岳、仙丈岳の頂には早くも白いものが見える。

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