花咲く頃
花を咲かせるために庭に植える木には、いろいろな種類があるはずだが、伊那谷の場合、限られた種類の木しか植えていないような気がする。花咲く頃に、どこの家でも同じような花が咲いているからだ。
そう考えるのは、我が家の花と同じ組み合わせの花があちこちで見られるからで、まず、拙宅の庭から紹介することにする。
毎年春になると、紅白二種類の花が咲く。Aは小米桜で、Bが菊桃である。
小米桜というのは、普段は藪みたいな見栄えのしない姿をしているが、これがシーズンになって純白の花を咲かせると大変豪奢な感じになる。菊桃も負けずに派手な花を咲かせる。この二つの木は時期を同じくして満開になるので、まことに鮮やかな対照を示すのだ。
他に、時期を同じくして咲く花に「しだれ桃」がある。下図は道ばたに咲いていたしだれ桃で、これが又派手派手しい花を咲かせるのである。
菊桃・しだれ桃に対抗する純白の花木には、小米桜の他にコブシがある。下図のコブシも道路端にあるのを撮影したものだ。
この地域の家々では、白い花として小米桜とコブシ、赤系統の花として菊桃としだれ桃を植えるのが一般的なのである。
上掲の写真は、普通の民家を撮影したものだ。周辺には、たくさんの花木が植えられている。赤と白のコントラストを狙って、木を植えていることは、一瞥しただけで明らかだろう。
某家の庭を、道から撮ったのが上の写真。常緑樹の植え込みの間に、しだれ桃、菊桃、コブシという組み合わせの花木が植えられている。
上掲の写真は、公園を撮ったと思われそうである。だが、これはれっきとした畑の写真なのだ。畑の回りに色鮮やかな花木を植える農家も、ときどき、見かける。
幹線道路の脇に、こんな桜の老木があった。
二本しか残っていない枝が、けなげに花を咲かせている。
伊那地方は、それほど高緯度にあるわけではないが、標高が高いため寒気が割と厳しい。まあ、北国の仲間に入ると言ってもいいだろう。それだけに、春になって花が咲き始めると、自然に心が躍るのである。
高架道路から、遠くに目をやると、ぽつんと孤立している桜が目に入ってくる。高遠の桜もいいが、人知れず、ひっそり咲いている桜も悪くない。